相続した不動産の売却でかかる税金とは?
親などから相続した不動産を売却する場合、どのような税金がかかってくるかご存じでしょうか。
実は、4つの税金がかかってくるのですが、知っておくと得になる「特例」もあるのです。
今回は、相続した不動産の売却時にかかる税金や売却の流れ、そして活用できる特例について解説します。
相続した不動産を売却するときにかかる税金とは?
<①登録免許税>
不動産の所有権をうつすときなどには、不動産登記をする必要があります。
不動産を相続した場合も、不動産の所有権が相続人から被相続人へとうつることになるため、「相続登記」をしなければなりません。
この登記をする際に発生するのが、「登録免許税」です。
登録免許税は、「固定資産税評価額の0.4%」と決まっています。
計算例:
固定資産税評価額が4,000万円の不動産を相続登記をした場合
4,000万円×0.4%=16万円
<②印紙税>
印紙税とは、経済取引をする場合に作成する契約書や金銭の受取書に課税される税金のことです。
印紙税は、売買代金によって異なります。
印紙税の例:
・契約金額100万円~500万円の場合:印紙税額2,000円(軽税減額1,000円)
・契約金額500万円~1,000万円の場合:印紙税額1万円(軽税減額5,000円)
・契約金額1,000万円~5,000万円の場合:印紙税額2万円(軽税減額1万円)
・契約金額5,000万円~1億円の場合:印紙税額6万円(軽税減額3万円)
・契約金額1億円~5億円の場合:印紙税額10万円(軽税減額6万円)
<③譲渡所得税>
不動産を売却して利益が発生した場合は、譲渡所得税が発生します。
譲渡所得税には、所得税と住民税、復興特別所得税が含まれ、所有期間によって税率は異なります。
短期譲渡所得税率(所有期間が5年以内):30%(所得税)+0.63%(復興特別所得税)+9%(住民税)=39.63%
長期譲渡所得税率(所有期間が5年超):15%(所得税)+0.315%(復興特別所得税)+5%(住民税)=20.315%
なお、復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のために使われる税金のことで、2037年までに発生した利益にかかります。
譲渡所得税率を利用して、以下のように譲渡所得税を計算します。
①譲渡所得=譲渡収入金額ー(取得費+売却にかかった費用)で売却の利益を計算する
②譲渡所得×譲渡所得税率をかける
また、①で譲渡所得がマイナスになれば利益が発生していないので、譲渡所得税はかからないということになります。
譲渡所得税の計算例:
亡くなった親が4,000万円で取得した不動産を、相続後5年以内に5,000万円で売却した場合
・譲渡収入金額:5,000万円
・取得費:親の購入費用4,000万円+登録免許税16万円
・売却費:仲介手数料156万円+印紙税2万円
譲渡所得は、譲渡収入金額5,000万円ー(取得費4,016万円+158万円)=826万円
この826万円に税金がかかってくることになります。
相続後5年以内だと譲渡所得率は39.63%であるため、826万円×0.3963=327.3万円の譲渡所得税がかかります。
<④消費税>
相続した不動産を売却する場合、不動産会社に仲介を依頼することがほとんどでしょう。
不動産会社を利用して契約が成立した場合は、仲介手数料を支払う必要があり、消費税の課税対象になります。
相続した不動産を売却する流れとは?
続いて、相続した不動産を売却するときに、どのような流れになるのかを見ていきましょう。
ポイントとしては、以下の流れを相続税の申告期間である「10か月」以内に終えられるよう、スムーズに手続きをおこなうことです。
<①相続人での遺産分割協議>
まず、相続が発生した際は、遺産分割協議をおこないます。
基本的には、相続人は配偶者もしくは子どもになりますが、場合によっては異なることもあります。
相続人が全員合意のうえ、遺産分割を決定し、遺産分割協議書を作成します。
<②相続した不動産の名義変更>
被相続人(亡くなった方)から相続人に所有権がうつることになりますので、相続した不動産の名義変更の手続きをします。
この手続きを「所有権移転登記」といい、司法書士に依頼することも、個人でおこなうこともできます。
<③不動産仲介会社に依頼、売却手続き>
登記後、不動産仲介会社に依頼して、買主を探し、売却手続きを進めます。
10か月以内にすべての手続きなど一連の流れを終わらせなくてはいけないため、それまでに買主が見つかるかがポイントとなります。
急ぎの場合は、仲介による売却ではなく、不動産会社などによる買取の方が、早く決まることがあります。
<④相続税・譲渡所得の申告、納税手続き>
売却が終われば、相続税の手続きに入ります。
相続税の申告は、被相続人(亡くなった方)の死亡時における住所を管轄する税務署になりますので、注意しましょう。
また、譲渡所得(不動産を得たことによる収益)についても忘れず確定申告をおこなうようにしましょう。
<取得費がわからない場合どうする?確定申告を忘れていたら?>
譲渡取得税などを計算する場合に、不動産の取得費が必要になってきます。
ただ、被相続人がいくらでその不動産を取得したのかわからない場合は、「不動産を売却したことで得た5%が取得費」としています。(概算取得費)
また、譲渡所得の確定申告を忘れた場合は、税務署から税務調査が入り、延滞税や無申告加算税を支払うことになります。
それだけでなく、金融機関のローンの借入にも支障が出るなどのペナルティを受けることになるため、漏れなく確定申告をおこなうようにしましょう。
なお、譲渡所得がマイナスの場合は確定申告をする必要はありません。
ちなみに、譲渡所得がプラスかマイナスかを判断するのは、後述する特例や特別控除を適用するまえですので、気を付けましょう。
相続した不動産の売却時に使える特例・特別控除
相続した不動産を売却するときに、是非知っておきたい特例や特別控除についてご紹介します。
<①相続財産を譲渡した場合の取得費の特例>
まず、不動産の相続期限(相続開始してから10か月以内)+3年以内に売却した場合、税負担が軽くなるという特例です。
譲渡所得は、先述したとおり「譲渡所得=譲渡収入金額ー(取得費+売却にかかった費用)」で算出されますが、この特例では、取得費用に相続税を加算することができるのです。
したがって、譲渡所得を少なく計算することができるため、税負担が軽くなります。
<②相続した空き家を売却したときの3,000万円控除>
続いては、相続した空き家を売却した場合、3,000万円の特別控除をすることができるというものです。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)ー特別控除3,000万円
譲渡収入金額がそもそも3,000万円以下であれば、特別控除額だけですでにマイナスになるため、譲渡所得税や住民税が発生しなくなります。
<③マイホームを売却したときの3,000万円控除>
最後は、自らが住んでいたマイホームを売却した場合に、3,000万円の特別控除をすることができるというものです。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)ー特別控除3,000万円
②の空き家の相続と同じく、3,000万円以下の譲渡収入であれば、譲渡所得がマイナスになり、所得税や住民税の課税がなくなります。
まとめ
以上、相続不動産の売却時にかかる税金や手続きの流れ、特例についてご紹介しました。
相続税以外にもいくつかの税がかかることや、実際の流れ、そして、少しでも税負担を軽減できる特例や特別控除を頭の片隅に入れておくと、相続時スムーズに手続きできるのではないでしょうか。
是非ご参考にしてみてくださいね。
※いえらぶコラムより
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