地名の由来~住まい探しと地名~
突然ですが、今皆さんが住んでいる地域名の由来をご存知ですか?
全国には様々な地名がありますが、土地の地形や風土が由来となったものや、その土地に縁のあった偉人からつけられた地名、戦国時代の武将達が名付けた地名などもあり、由来は様々です。
しかし現在の地名の中には、自治体の合併によって地名が変更されたり、もしくは読みが同じでも漢字が変更になった地名も数知れず。
特に、土地の地形や風土が由来となった地名の場合は、後世になってから何らかの形に変更されたものが多数あります。
普段はあまり気にすることのない地名の由来ですが、実はこういった地名には、先人達が後世に伝えたい大切なメッセージが込められているのです。
◆使われている漢字には意味がある
最近は自治体合併などでひらがなやカタカナ表記の地名も増えましたが、まだまだ漢字表記の地名が圧倒的に多い日本。
そんな日本の地名に使われている漢字には、以下のような意味があります。
・沢・洲・浜・浦・沼…川や海・湖・沼など『水』に関するものが近くにある
・田・山・谷・坂…田畑や山・谷・坂などが近くにあったり、その場所自体がそういった地形になっている
・崎・埼・岬…近くの陸地が海に突き出ている
これらの漢字は、土地や地形の特徴がそのままつけられていることが多いので、何となく由来を想像できるかと思いますが、このような漢字が使われていても、実際には近くに該当する土地や地形などがない場合もありますね。
例えば東京都渋谷区。渋谷の由来は諸説ありますが、その中の1つに『かつて渋谷川が流れていたから』という説があります。
この渋谷川が流れていたのは現在の渋谷駅辺りで、渋谷駅建設に伴い姿を消しましたが、川があった当時は付近一帯が『しぼんだような谷間』だったそう。
そこから転じて渋谷という地名が誕生したのです。
同じく横浜市という地名も、現在は東京湾沿岸部が埋め立てられて工業地帯や観光地となっていますが、元々はこの場所に横長に延びた砂浜があったことに由来しています。
このように、今は普通の平地や市街地に見えるような場所も、実は昔は全く違う地形をしていたというケースも珍しくありません。
◆漢字のイメージと由来が一致しないケースもある
先述の話では、土地の特徴がそのまま使われている例を挙げましたが、必ずしもそうとは限らないケースもあります。
それが、かつてその土地で起きた自然災害に由来して付けられている地名。
この場合は災害を連想させる言葉から、同じ音読みで違う漢字を当てたケースが一般的です。
水害が由来の漢字
滝・鶴・袋・灘・竜(龍)・駒など
土砂崩れなどが由来の漢字
柿・倉・猿・蛇・野毛・萩・桜など
地震や津波が由来の漢字
女(小名)・釜(鎌)・津など
上記はほんの一例ですが、なるほどと思うような字もあれば、「どうしてこの字が?」と思うものもあるでしょう。
特に鶴や桜などは、おめでたい印象や明るい印象を受けるものですが、この字が当てられたことにも理由があります。
まず鶴ですが、これは鶴の首のように湾曲した川をさしている字で、こういった川は大雨が降ると氾濫や決壊することも多かったそう。
同音異字としては津留と表記する地域もありますが、意味合いは同じです。
そして桜は『裂く』という言葉から転じてこの字がつけられていることが多いのですが、これは土砂崩れなどで土地が分断=裂かれてしまったことを意味しています。
他にも柿は崖崩れによって土地が『欠けた』ことが、釜(鎌)や倉は津波で内陸の深いところまで削り取られたことが由来になっています。
実際、鎌と倉の両方の字が当てられている鎌倉の由来を調べると、過去に幾度も地震や津波で大きな被害を受けたという記録も残されているそう。
『鎌』という字は『釜』の同音異字として当てられたもので、他にも『鴨』や『加茂』など、似たような音と漢字が使われているところも同様の意味を持ちます。
漢字の意味ではなく『読み方』に注目して調べると、こうした意外な由来が解るかもしれません。
◆先人がマイナスの意味の漢字を選んだ理由
自然災害が多かった土地に暮らしていた先人達は、度重なる災害に頭を悩ませていました。
技術が今ほど進歩していなかった昔は、災害対策といってもできることが限られていたはず。
そうした中で、せめて自分達の子孫が同じ災害で苦しむことがないように地名にマイナスの漢字を使うことで、その土地の危険度を伝えようとしていたのです。
◆なぜ漢字が変わってしまったのか
前項のように、先人達が後世のことを思って付けた地名ですが、これまでの例を見てみると、その多くが後に違う漢字に変更されていることが判ります。
その理由としては、時代の流れとともに土地の歴史を語り継ぐ人がいなくなったことや自治体の合併で旧地名が消滅したこと、より多くの人に「この土地で暮らしたい」と良い印象を持ってもらえるように変更したことなどが挙げられます。
典型的な例としては、最近の新興住宅地の名称。
いわゆるニュータウンと呼ばれるような建売の新築一戸建てが多い地域は、『○○丘』や『○○台』などの地名で呼ばれていますが、これらは新規分譲の際に不動産会社などが命名した地名であることが多く、古い文献などを調べると宅地開発前は違う名称や漢字が使われていたというケースもあります。
ただし、今回取り上げたような災害が由来の漢字がつけられている土地に住んでいたり、引越先の地名に含まれているとしても、全てが悪い意味合いを含んでいるとは限らないので、その点はご注意ください。
※国土交通省が運営する、「ハザードマップポータルサイト」です。身の回りでどんな災害が起こりうるのか、調べることができますので参考にしてみてください。
最後に...
人の名前には「こういう子に育ってほしい」と親御さんが願いを込めたように、地名にも「ここにはこんな危険があるから気をつけて」という先人達の思いが込められています。
近年は様々な大災害が起きやすくなっていますが、こうした地名の由来を調べることも、災害を避けたり被害を最小限に抑えることができる防災の1つの方法といえるでしょう。
※いえらぶコラムより
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